2012.07.23(月)

未来の野菜を作る 無農薬野菜 AAAレタス 大成建設植物工場?

 
筆者の「独断と偏見」シリーズです。
このブログで「外野が賑やかな植物工場」という内容のコメントをしたことがあります。
今回もこれと同じような内容です。
 
昨日(7月22日)の日本経済新聞に次のような見出しの記事がありました。
 
「植物工場に本格参入 大成建設 薄型照明で省エネ栽培」
 
筆者は「これは一大事」と記事の詳細を読みました。
 
概要は次のようなものです。(インターネットを見ても該当する記事が見当たらない)
1.大成建設が植物工場に本格参入する。
2.薄型の発行ダイオード(LED)照明を使用する。
3.自動車内装材の旭コルク工業に「栽培面積100㎡」のユニットを納入した。
4.総工費は3千万円で「商用利用」としては初の受注である。
5.2012年度の売上目標は五億円を目指す。
6.売値200のリーフレタスで、原価を10~15円抑えられる。
7.消費電力が少ない点を売りものに販売増を目指す。
 
ちょっと植物工場に興味のある人であれば、この記事にいろいろと疑問が涌くと思います。
1.マスコミでは「大成建設」はとっくに植物工場市場に参入していると言っていたはず。
2.栽培面積が100㎡で、本当に「商用利用」できる規模なの?
3.日産能力は示されていない(これも不思議)けれど、100㎡で3千万円もするの?
4.200円のうち10円~15円ってわずかに「5~7%」じゃないか?
 
今までの日本経済新聞を読んでいれば「植物工場メーカーでは大成建設は大手のひとつ」
(言葉が非常に柔らかく、誤解を恐れずに言えば、日経の読者は大成建設が最先端)と考え
てもおかしくないと筆者は思います。
今更になって、「商用利用として初の受注」も驚きますが、「100㎡の栽培設備で商用利用」
というのも首をひねります。記事を書くための「基準」がいろいろありそうです。
 
筆者は自宅でも「日本経済新聞」を定期購読しているロイヤル読者ですが、どうも首をひねる
ことが最近多いような気がします。
日本の航空業界についてもかなり偏っている感じがします。
 
 

2012.07.12(木)

未来の野菜を作る 無農薬野菜 AAAレタス 植物工場をめぐる状況その5

 
その4で少し触れた「販売方法」について述べたいと思います。
 
植物工場の生産物を「自社」で使えれば、売れ残りを心配する必要がないので一番安全です。
例えば、惣菜メーカーが自社で植物工場を運営して、自社の惣菜の原料に使うのが典型です。
惣菜工場と同じ場所にあれば「輸送費」も全く掛かりません。
 
上記のような「自家消費」を別にすると、通常は他社に販売することになります。
この場合に「生産コスト」が通常の農産物に比べて高い植物工場の生産物は「付加価値」を
認めて貰って「高い価格」で買ってもらう必要があります。
 
ここでいう「付加価値」とは、私たちの会社で言えば「AAA」です。
「無農薬」「低細菌」「低硝酸」です。
これに加えて「歩留まりの高さ」「保存性の良さ」があります。
 
上記の付加価値を理解してくれる人は「値段も決して高くないよね」と言ってくれています。
会社が始まった時から使ってくれている(3年半)ホテルのレストランのシェフは「最初は
高いと思ったけど、使っているうちに歩留まりや使い勝手の良さを考えると高いと思わなく
なった」という、筆者としては涙が出るようなコメントをしてくれます。
 
レストランの厨房でも「人件費」を削ろうと、働く人の人数を減らしています。
少ない人数の中で、レタスを「洗い」「異物の有無の確認」「水切り」「カット」などに人手を
割くのは大変なことです。
この人件費の削減を考慮すると「植物工場の野菜」は高くないという話になります。
 
「歩留まり」が高いというのも、大きなメリットです。
露地のレタスを厳密に選別していくと、旬の時期でも「60~65%」しか使えません。
季節外れの時期で品質が悪い時には「35%」程度しか使えないということもあります。
私たちのレタスなら「95%以上」の歩留まりがあるので、値段が2倍でも十分対抗できると
いうことです。
 
「無農薬」をアピールして、「低硝酸」で「エグミのない」おいしいレタスということで更にお客様に
喜んで頂けるということが営業の喜びですね。
 
 
 

2012.07.04(水)

未来の野菜を作る 無農薬野菜 AAAレタス 植物工場をめぐる状況その4

 
今回は「植物工場への初期投資額」について、述べたいと思います。
 
私たちのような完全閉鎖型植物工場の建設コストは一般に「1株10万円」と言われているそうです。
つまり、「日産2000株」工場であれば「2億円」掛かるそうです。
これには多分建屋の建設コストは入っていません。
 
筆者は、このような膨大な初期投資をしたら植物工場運営は採算がとれないと思っています。
このために、「公的補助金」という発想が出てくるのだと思います。
 
現在のように「植物工場業界」が未成熟なうちは「公的補助金」による支援は重要ですし
ありがたいことです。
しかし、この「公的補助金」を「前提」に業界自体が生きていこうとするのは間違いだと思って
います。なるべく早く「公的補助金」がなくても生きていける業界にならなければなりません。
 
「公的補助金」がなくても生きていくためには「初期投資をなるべく少なくする」ことが、まずは
重要です。そのためにもコストの高い「技術」の導入は出来ません。
普及している技術で最大の効率性を追求する必要があります。
 
その点では、ネームバリューのある大きな設備メーカーや建設会社には売上があまり伸びないので
魅力的な市場ではないかもしれません。
だからこそ、中小の会社が進出できる市場なのだと筆者は考えています。
 
「公的補助金」なしで生きていくためには「初期投資」だけでなく、「生産物の販売」についても
工夫が必要になります。
「値段を下げる」ことはもちろんなのですが、販売方法の工夫も重要になるのです。
 
 

2012.07.02(月)

未来の野菜を作る 無農薬野菜 AAAレタス 植物工場をめぐる状況その3

 
植物工場の「技術」について、少し述べたいと思います。
 
まずは、植物工場の設備に係る技術です。
植物工場というと「未来の産業」「先端技術」というイメージがあると思います。
実は植物工場自体にはそんなに「画期的な技術」が使われているわけではありません。
 
完全閉鎖型の植物工場では「光」「温度・湿度」「二酸化炭素」「養分」をコントロールして
います。それらのコントロールを効率的に行うために「完全閉鎖」にするのです。
 
光のコントロールというと難しそうですが、蛍光灯などの「人工光」を24時間タイマーで点けたり
消したりしているだけです。
「温度・湿度」だって、業務用エアコンの温度設定(サーモスタット)をしているだけです。
「二酸化炭素」もボンベからチューブを配管して、途中に穴をあけているだけです。
特に技術的な背景のない人でも理解できるレベルの技術です。
 
「養液管理」だけは、栽培の知識がないとどの養分をどのくらい入れたら良いかは分かりませんが
別に「画期的な」アイデアで管理しているわけではありません。
 
こんな「通常のありふれた」技術を組み合わせて成り立っているのが、完全閉鎖型植物工場
です。
全体のバランスは重要なので、「ある程度の規模の運営の経験」があれば設備デザイン
もできると思います。
 
逆に、最先端の技術を導入しようとするから難しい話になるのではないかと筆者は考えています。
植物工場はなにも「先端技術」を使ったものではなくて、「ありふれた」技術を使って「投資金額」
をなるべく少なくすることを考えないと「採算性」で苦しむことになると思っています。
 
 
 

2012.06.26(火)

未来の野菜を作る 無農薬野菜 AAAレタス 植物工場をめぐる状況その2

 
筆者は「生意気」ながら、植物工場に関するセミナーの講師や新規事業として植物工場を
考えている人や会社の相談にのることがあります。
また、短いですが文章を書くこともあります。
 
そんな中で感じることは「ネームバリュー」のある会社の方にはなかなか勝てないという
ことです。別に勝負をしているわけではないので「勝ち負け」ではないのですが。
 
世の中で有名な(ネームバリューのある)会社が何か発表すると、野菜工房が同じことを
言ったりやったりするよりも注目されるということです。
植物工場の設備販売などを考えても、有名な会社が「植物工場設備販売に進出」と発表
すると「信頼性のある設備」だろうと考える人が多いようです。
 
仮に、その会社に「商業規模の設備」を建設した実績が全くなくても「信頼性のある設備」だと
理解される傾向があります。
また、「○○○○大学」の技術を使っているとか共同で開発とかいうセールストークも非常に有効
なようです。
 
筆者はよく言うのですが「商業規模」の設備を「建設」したり、「運営」したりの「実績」が
どのくらいあるかが最も重要です。
「ハードがきちんとしている」ことは大前提で、「運営ノウハウ」(栽培ノウハウだけではない)が
備わっている会社の設備を検討することが絶対条件です。
 
大学や研究機関の「実験規模」の設備では「栽培ノウハウ」は得られますが、「商業規模の
運営ノウハウ」とは違うことを認識しなければなりません。
また、「小さな規模(日産100~200株)」で、「とりあえず勉強」してという考え方にも
筆者は否定的です。
 
商業規模(筆者は最低日産1000株だと思っています)での「運営ノウハウ」は実験設備の
ものと全く違います。
商業規模の運営ノウハウを「勉強したい」ならば、商業規模の設備のところで何ヶ月か研修
することしかないと思います。
 
植物工場は大きな初期投資が必要なので、実績のない設備や運営ノウハウがない会社から
設備を購入することは「大きなリスク」だと思います。
誤解をおそれずに言えば「実績づくり」のお手伝いになっても「しょうがない」という覚悟が
必要ですね。
 
筆者の非常に偏見に満ちたコメントでしたが、「その1」でもコメントしたように「植物工場業界
よりも外野が賑わっている状況」を考えると「外野」からは一歩離れた冷静な自身による
判断がより重要になるということを言いたかったのです。