2011.12.29(木)

未来の野菜を作る 無農薬野菜 AAAレタス 植物工場の運営

 
前回(24日)の続きになるようですが、植物工場のリスト上の数は増えています。
しかし、業界にいる人間の実感としては必ずしも増えているという感じはしません。
むしろ、一部の会社は撤退したり、撤退を真剣に検討しているようです。
 
筆者が時々講演会に呼ばれて話すことに「植物工場はハードは必須ですが、より重要なのは
ソフトです」というのがあります。
この意味は「野菜工房の栽培指導」を受けることを検討してください、という営業トークもある
のですが、より重要な意味として「植物工場のハードを購入してだけでは運営は出来ない」と
いうことです。
 
植物工場の「運営ノウハウ」はそんな簡単なものではありません。
この業界には「植物工場は素人でも生産できる」という説明をしながら、ハード(工場設備)を
売り込もうという人がいます。
実際に、多額のお金を払って工場を建設したけれど、なかなか商品になる生産物が栽培できない
という会社を筆者は複数知っています。
ハードを販売した会社も運営指導が出来ないという最悪の状況です。
 
筆者が「運営ノウハウ」と言っているのは「商業規模の生産設備」を運営することです。
栽培ノウハウだけではありません。
この意味は「実験室での栽培ノウハウ」だけでは「商業規模の設備」の運営は出来ないという
ことです。
大学や大企業の実験室で植物工場の研究をしていても商業規模の運営は出来ないのです。
 
同じことがなのですが、企業が新規参入を検討する際に言われることに、「当初は小さな設備」
で運営ノウハウを勉強して、自信がついたら大きな設備投資を検討したいというのは無理なの
です。
「小さな設備」ではいくら「勉強」しても「商業規模の運営ノウハウ」は身につきません。
この場合には「商業規模で運営している会社」に従業員を派遣して研修させるのが一番です。
ある程度の期間(最低でも半年~1年) 商業生産設備で従業員と同じような仕事をして
「勉強」するのです。
この研修コースも私たち㈱野菜工房では行っています。
(すいません、最後も営業トークでした)
 
 

2011.12.24(土)

未来の野菜を作る 無農薬野菜 AAAレタス 植物工場の設置数

 
今年もそろそろ終わりそうなので、筆者の個人的感想ですが「植物工場の一年」を振り返って
みたいと思います。
 
植物工場は一般的には注目されています。
「将来性のある事業だと思う」とか「新規事業として検討したい」という人はたくさんいます。
また、マスコミでも時々取り上げられます。
 
実際に植物工場の数も増えているようです。
平成23年3月時点での資料だと「完全閉鎖型」が64ヶ所となっています。
平成21年春の段階で34ヶ所でしたから「2倍」になったということです。
一覧表をご覧ください。
http://www.maff.go.jp/j/seisan/ryutu/plant_factory/pdf/pdf.pdf#search=’
 
しかしながら、実際にこの業界で仕事をしている筆者の感覚からすると「こんなに盛況になって」
いるという感じはしません。
2倍になった植物工場の生産物が百貨店やスーパーでたくさん売られているという感じがしません。
営業をしていて、競合相手が増えたという感じもあまりしません。
設備は出来たけれど、「まだまだ生産が安定していない」ということなのでしょうか?
 
資料の「完全人工光型」の欄で「主な品目」を見ると、品目の種類が増えたという感じはします。
注目すべきなのは「アイスプラント」を作っているところが5ヶ所もあるところです。
また「苗」を作っているところも多くあるということです。
 
品目が増えることは植物工場にとっては非常に良いことだと思います。
私たちは「レタス」を中心に栽培していますが、他の品目も栽培できます。
実際に試験栽培はしました。
確実な販売先があれば、いろいろな品目を作りたいと思います。
特に「希少価値」のあるものを「年間を通して」栽培するのが植物工場の強みだと思っています。
 
最近、貰った資料なので、これからじっくりと調べてみて筆者なりのコメントをしていきたいと
思います。
 

2011.10.24(月)

未来の野菜を作る 無農薬野菜 AAAレタス 植物工場の採算性

 
植物工場という「ひとくくり」で、採算性を議論することには無理があります。
同じ業界でも「儲けている」会社もあれば、「儲からない」会社もあります。
経営者の手腕が採算性を左右するということだと思います。
 
それでも、一般的に言って植物工場を運営する場合には「資金」「運営ノウハウ」「販売」だと
思います。
 
典型的な「設備産業」である植物工場は、売り上げが伸びてきて、生産能力が足りなくなると
新しい設備を建設するしかないのです。
作業のシフトを増やして(残業)しても、生産量は増えないのです。
このために、「資金」は非常に重要なファクターです。
 
次は「運営ノウハウ」です。
前回にも説明しましたが、資金があると言って設備を購入しても、運営ノウハウ(ソフト)がないと
品質の良い野菜はできません。
 
そして最後に「販売」です。
高品質の野菜ができても、販売先がないと売上になりません。(これは当然のことですが)
特に、野菜は「生鮮物」なので販売のタイミングが合わないと無駄になってしまいます。
また、品目ごとに販売が適合しないと「売るものはあるのに」お客さんの「希望する品目が
ない」ということになります。難しいものです。
 
「資金」「運営ノウハウ」「販売」がうまく連動して採算性が向上するのです。
これはあまりに「当たり前」のことで、何も植物工場に限らないのでしょうが。
 
植物工場特有のものとしては、「生産規模」についてコメントしたいと思います。
 
商業規模としては「日産1000株」くらいのものが、小さい工場だと思います。
この規模では「なかなか採算にのせる」のは大変です。
不可能とは言いませんが、利益が出ても大きな利益にはなりません。
 
筆者の経験とこれまでの数字から判断すると「日産2000~2500株」くらいないと期待する
ような利益はなかなか生まれません。
この規模は採算性を維持する良い規模であり、一方で社員(技術者)ひとりの目が届く規模
ではほぼ限界だと思います。
これ以上大きなものを建設しようと思うなら、「2000~2500株」をひとつのユニットにして
複数ユニットをそれぞれの担当者(技術者)が管理するという手法が良いと思っています。
 
 

2011.10.20(木)

未来の野菜を作る 無農薬野菜 AAAレタス 植物工場建設

 
第3次植物工場ブームと呼ぶ人がいます。
植物工場が話題になることが多いという意味では「ブーム」と言えるかもしてませんが、
日本中でドンドン植物工場が建設されているというのとはちょっと違うと思います。
 
植物工場を作るとなると、商業生産規模の小さなもの(日産1000株くらい)でも1億円前後
掛かることが多いのです。
これだけの資本を投入するのはそんなに簡単なことではありません。
一般に「政府の補助金が出るだろう」と言われますが、実際には1年半くらい前に第3次補正
という枠で「植物工場への補助金」が出されたのを最後に「植物工場への補助金」は制度上
ありません。(産地収益力向上、農家が共同して作る施設園芸というくくりで可能性はありますが)
 
一方で、大きな初期投資をしたけれど「運営ノウハウ」がない会社もあります。
植物工場は「工場」だから、ハードを買えば(それも高い金で)良い品質の野菜ができると
思われがちですが、これは違います。
完全閉鎖型の植物工場では「ハード」はもちろん必要ですが、運営の「ノウハウ(ソフト)」が
より重要だと私たちは考えています。
 
「クリーンルーム」建設の技術があるから植物工場の販売を展開するという大手建設会社
ありますが、これは必ずしも的を得ていません。
いわゆる半導体製造などで使われる「クリーンルーム」は「パーティクル(ホコリ)」がどのくらい
あるかという観点で作られます。「NASAのいくつ」などという基準ですね。
私たちの栽培室は、「菌数をどれだけコントロール」できるかということが重要なポイントです。
この菌数はハードだけでコントロールできるものではありません。ソフトがより重要なのです。
 
また、小さな実験室でノウハウを取得してから商業規模の設備に投資しようという考え方も
必ずしも的を得ていません。
小規模での栽培技術は基礎にはなりますが、規模の大きな商業生産では全体をコントロール
する「運営ノウハウ」があるのです。
ハード的にも小規模なものを「そのまま」大きくしたら、商業規模の設備になるという考え方も
間違いです。大きな空間の環境をコントロールするにはそれなりのノウハウが必要です。
 
これから商業規模の植物工場の運営に参入しようといく方は、「実際に植物工場を運営している」
ところから話を聞いて、そこの技術やノウハウを導入する方法を考えるべきだと思います。
そのためにも、わたしたちのようなコンサルティングが必要になると考えています。
(ちょっと生意気ですね。)
 
 

2011.10.19(水)

未来の野菜を作る 無農薬野菜 AAAレタス 植物工場とJA

 
私たちの会社(株式会社 野菜工房)は「JAちちぶ(秩父農業協同組合)」の准組合員です。
認定農業者になった時に加盟しました。
その後、筆者も代表者で年間150時間以上農業に従事しているということで「正組合員」に
なっています。つまり、会社も個人もJAのメンバーです。
 
それでも、私たちはJAに全く出荷していません。直売所も利用していません。
理由は簡単です。私たちのビジネスモデルの中にJA流通が入っていないからです。
出荷時に価格の決まっていない、自社で価格交渉ができない、流通方式には非常に違和感
があります。
 
大量に、その日収穫されたものを「全て」出荷できるというメリットは感じるのですが、一度手を
離れた私たちの生産物がどのルートを通って「いくらで」納入されるのかが分からないと
私たちが直接交渉している顧客に別ルートから「同じ商品が、全く違う価格」で納入される
可能性があるのです。
私たちは責任を持って、品質・価格を交渉していますので、別の価格で販売されると私たちの
信用にもかかわります。
 
JAの基本的なコンセプトは「組合員平等」というものです。
この観点から同じ品目であれば、同じ価格にならざるを得ません。
極端な言い方をすれば「品質の差」は認められないのです。
 
もともと農家でJAの有力なメンバーだった人が、JA外の流通を利用し始める場合の理由は
大半が「自分たちの品質」をきちんと評価して欲しいというものだと聞いています。
農業法人も同じような理由だと思います。
 
もちろん、農協には肥料、農薬、種などの代金を立て替えてくれたり、必要な保険や融資を
してくれたり、新しい農業技術の指導をしてくれたりとたくさんの重要な機能があります。
これで助かっているメンバーの方が非常に多いということは間違いないと思います。
その点で、私たちも活用できる機能はどんどん活用されて頂こうと思っています。